「GoToトラベル」と感染拡大の因果関係について考える
オピニオン
2020年11月22日 (日)
西浦博(京都大学大学院教授)
厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの第14回(11月19日)会議で、資料3(参考資料)として、内閣官房・内閣府が作成した資料(題:「航空旅客数と感染者数の増加には統計的な因果関係は確認できない」)が公開された(資料は、厚労省のホームページ)。 この参考資料は、以下に記すようにアドバイザリーボード会議では明示的に出すべきでないという議論があったものである。会議資料として公開されたのは事実であるが、まるでこの資料をアドバイザリーボードが認めたと捉えられることは同組織の信頼あるいは科学的な分析能力を毀損しかねないものであると認識している。そこで、私自身が疫学専門家の一人として、GoToトラベルと感染の間の因果関係についてどう考えているのかを整理しつつ以下に説明したい。 【因果関係の分類】 そもそもGoToトラベルキャンペーンと感染の拡大の間の因果関係はいくつかに分類して議論したほうがわかりやすい。旅行による感染を考えたとき、キャンペーンに伴う感染者だけを検討しても、それはキャンペーンを通じて生じた2次感染者など全感染者中にすれば最初の一部でしかなく、また、直接的に観...
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