医師法21条による警察への届出は少なく、刑事裁判も限定的 - 樋口範雄・東大名誉教授・武蔵野大特任教授に聞く◆Vol.1
インタビュー
2020年1月22日 (水)
聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)
厚生労働省の「医療行為と刑事責任の研究会」は2019年12月、中間報告を公表した。同研究会は、過去に刑事裁判になった裁判例等を分析して、事例の特徴を考察するのが狙い(『刑事医療裁判、18年間で256人中、無罪は6人』を参照)。同研究会の座長を務めた武蔵野大学法学部特任教授で、東大名誉教授の樋口範雄氏に中間報告の内容や今後の研究方針などについてお聞きした。併せて、日本医療安全調査機構の医療事故調査・支援事業運営委員会委員長の立場から、医療事故調査制度の現況についても伺った(2020年1月15日にインタビュー。全3回の連載)。 ――まず本研究会の目的をお教えください。 医療事故で医師等が刑事責任を問われた時代があります。きっかけは1999年の東京都立広尾病院事件。当時の院長が医師法21条違反を含めた罪で起訴され、2004年の最高裁判決で有罪になりました。同判決では、「医師法21条は違憲ではない」との判断も出ています(編集部注:異状死体の届出を定めた医師法第21条は、日本国憲法第38条第1項の自己負罪拒否特権に抵触するとの意見もあった)。 厚生労働省も、また日本外科学会なども、「自分たちは悪...
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