暴力患者への対処は「逃げる」
オピニオン
2014年8月12日 (火)
岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)
医療者に対する暴力事件は普遍的に起きている。看護師を殴ったり、あるいは刺したり。アメリカでは医療者に対する暴力は、他の職種に対する暴力よりも4倍も多い。そして、2000年から2011年の間に91件も病院での発砲事件が起きている。銃の発砲、乱射はアメリカの重篤な慢性疾患なのである(The Lancet. 2014; 383: 1373-1374)。 このような暴力はアメリカだけの話ではない。心理学者である南フロリダ大学のポール・スペクター教授が世界中の15万人以上の看護師に対する暴力について調査したところによると、対象者の3分の1が肉体的な攻撃をうけ、残りの3分の2は暴言など、肉体的ではない形で攻撃を受けていた。とくに、救急センター、精神科、老年科の病棟がリスクが高い。 長い待ち時間、ストレス、病気や怪我の苦痛、不安、薬物使用など、医療の現場には暴力を助長する要素がたくさんある。医療者の方も忙しくてなぜそんなに待ち時間が長いのか、十分に説明する時間がない。これが怒りに火を注ぐ結果になり、さらに医療者に対する苦情につながる。その苦情を聞くために、もっともっと他の患者さんの待ち時間が長くなり...
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