「3ステージのアプローチは理解できる。でも、そんなのやる時間がないよ」
これはよく聞かれます。「特に2ndステージ(治療ゴールの設定)で相手のことを細かく尋ねるのなんて無理……」。ですよね。たしかにその通りです。でも時間がなくても、3ステージのアプローチを使わないとより遠回りになります。保証してもいいです。
私の経験を一つシェアします。「はじめに」(vol.1参照)でも書きましたが、2020年4月にニューヨークがコロナで大変なことになったとき、私はERでチームを率いて患者を診ていました。とにかく患者が溢れかえって大変でした。家族は付き添えないので、病院の入口で患者と別れます。2、3日前までは普通に生活していた高齢者が、コロナに罹って急激に悪くなり、命が危険な状態になります。最後に顔を見たときにはまだ大丈夫そうだったのに、今まで会ったこともない医者から電話がきて「命が危ない」と告げられ、それこそ生死にかかわる治療方針を決める会話を、対面ではなくて電話でしなくてはならないのです。とんでもないことです。
90歳くらいの女性が、もともと転移性肺がんでヨレヨレだったところに、コロナにかかって呼吸苦でERにやってきました。...
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