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医師と民事責任――報告書見落としの事例に学ぶ

2024年8月29日  診断と治療社

民事責任の考え方を知って、過剰な反応を防ぐ 臨床現場では、ヒヤリハットやインシデントとよばれるような、重大な結果に至る一歩手前の事象は、日常的に起こっているといえるでしょう。「1つの重大事故の背景には、29の軽微な事故、300の異常がある」というハインリッヒの法則は、労働災害における古典的な法則ですが、この関係は医療過誤にもあてはまると考えられています(図1)。 1999年の患者取り違え事件、消毒薬誤投与事件を契機として、医療界全体における医療安全に対する意識が向上し、様々な対策が講じられていますが、それでもなお、多くのインシデントが日常的に起こり得る医療現場において、望ましくない結果の発生は少なからず発生してしまいます。このように、医療従事者であればおよそ誰でもインシデントに遭遇しますし、精力的に臨床医療に携わっている限り、医療過誤は、決して他人事ではないといえるでしょう。 前項で説明したように、民事事件は満たすべき要件のハードルが低いため、臨床に従事していれば誰でも民事事件の当事者になり得ることから、事件化を恐れるあまり、医学的に根拠の乏しい過剰な医療行為が行われるような萎縮医療...